バウンダリー(boundaries)とは?
ウィキペディアによれば
とされていますが、カウンセリング業界で使われてきた言葉であるとされています。
キャリアマネジメントにおいては、「組織や産業、あるいは専門性など、これまで境界とされてきたものをあたかも何もないかのようにキャリアを歩む人々 」 と定義されています。
つまり、日本の大企業型マネジメントが特徴的ですが、「その企業でしか通用しない専門性やスキルを身に付けるキャリアを歩む人々」と対照的な人材です。
違う企業でも評価される、違う業界でも評価される、そんなスキルや経験をもつ人材がバウンダリーレスキャリアと言われます。
日本の雇用流動性が低い原因
日本人が海外に出てグローバルに活躍しようとする場合、旧来の企業依存タイプとも言えるキャリアを歩んできた人材が、そのまま海外のグローバル企業で通用するか?という問題があります。
その業界、その企業、その職種、そのポジションであるから評価されているスキルや経験をもつ人材が、他の業界、他の企業、他の職種、違うポジションに転職しようとした場合、評価されない、採用されない、採用されたとしても待遇が大きく下がる、ということは日本国内での転職でも当たり前に直面することになります。
海外でグローバル企業に転職しようとした場合は、もっと顕著になることは間違いありません。
企業が主導して個人のキャリア形成をしてきた日本企業で培ってきたキャリアは、個人が主体的にキャリア形成をし、企業はその支援をする、あるいはその場を提供するだけに過ぎない海外のグローバル企業でそのまま活かす、評価されることは極めて難しいと言わざるを得ません。
雇用流動性が低い日本の企業で築き上げたキャリアの人材が、そのままで、雇用流動性が高い海外のグローバル企業、つまりは、バウンダリーレスキャリア boundary less career をもつ人材が集まっている企業に評価される、活躍するということは難しいのです。
日本型キャリア形成をしてきた人材がグローバル人材となるためのキャリア形成
日本の旧来の大企業でキャリア形成をしてきた人材は特定のその企業内でしか評価されないような経験を積んでスキルをアップさせていったとしても、海外のグローバル企業に転職できるか、評価されるかという視点で見た場合は、劣化あるいは退化したとも言えるのではないでしょうか。
そもそも、日本の大企業でキャリアアップした、ということはどういうことと定義されるでしょうか?
例えばビズリーチでは以下のように定義しています。
そして、マイナビエージェントでは以下の通り。
「部下を持ち、マネジメントにも携わりたい」「システムエンジニアから、上流工程に携われるコンサルタントになりたい」といった転職動機が、キャリアアップに該当するいい例です。
タイプでは以下の通り。
・ マネジメントに携わる
・ 部長や課長へ昇格・昇進する
・ 転職によって年収が上がる
・ アルバイトや派遣社員から正社員になる
・ 独立・起業する
ということです。
一方、キャリアアップと近い言葉で日本にはスキルアップという言葉も使われています。
ビズリーチでは
と定義しています。
マイナビエージェントは
としています。
技能や能力が上がったと評価されたから昇進したという因果関係になることは一般論としてはあるでしょうから、スキルアップしたことが評価されてキャリアアップした、ということにもなるでしょう。
ただ、昇給昇進のためにスキルアップしたとすれば、昇給昇進というその会社ならではの指標によるキャリアアップを目的としたスキルアップであったとすれば、そのスキルは、バウンダリーレスキャリアにつながるとは言えません。
日本の旧来型大企業で働き、昇給昇進というキャリアアップにつながるスキルアップを図ってきたという人材はバウンダリーレスキャリア人材とはなりにくいのです。
企業主導で、その企業でしか評価されないスキルをアップさせるキャリア形成ではないキャリア形成を目指す人材は、その企業では評価されないことになり、責任ある仕事は任せられず、待遇は上がらず、厳しい会社であれば、仕事を取り上げ、閑職に追いやり、さらにはそのような人材を社員として雇用することもしないように追い込むこともあるでしょう。
そのような会社で働きつつ、グローバルキャリアを目指そうとした場合は、それほど遠くない将来にはその会社を退職する決意をもってキャリアチェンジをしなければならないのが現状です。
バウンダリーレスキャリアがなく日本の企業にしがみつく人生、バウンダリーレスキャリアを歩んで主体的に流動する人生
簡単に言えば、今勤務する会社を退職したとしても、やりがいを感じる仕事内容や納得できる待遇の仕事を得られる自信がない人は、その会社でそのまま働き続ける方が幸せだろうし、その会社で評価されているのであれば、敢えて退職する必要もないので、「しがみつく」というわけではない。
今勤務する会社にも評価されず、やりがいを感じられる仕事もしていないし、待遇も悪く納得できないが、退職して他の会社で仕事を得られる自信もないし、見つかったとしても待遇は大幅に下がるだろうという人は「しがみつく」方がまだ幸せ、ということ。
そのような思いの人は恐らく日本で日本の企業を対象に転職活動をしたら、本人の想定するような厳しい現実に直面するであろう。
しかし、外国で現地の企業、あるいはグローバル企業を対象にして転職活動をしたら、そうなるとは限らないのではないだろうか。
「日本のその会社でしか通用しない」あるいは「どの会社であっても日本の企業では通用しない」「待遇の低い会社の仕事しか得られない」という人材だからといって、「海外のどの会社でも通用しない」「海外であっても待遇の低い会社の仕事しか得られない」ということにはならないのではないか。
海外の企業が日本の企業と同じような人物を求めているわけではないからである。
だから、日本の企業で評価されている人はもちろん海外の企業でも評価される期待は大きいが、そうでない人でも日本でくすぶるよりは海外に出てやり直しができるチャンスを狙った方がよい。