特定非営利活動法人ジャパンハートという国際医療協力・海外医療ボランティア医師団の医療法人があります。
僕は、その設立者の特集番組をテレビかユーチューブで見たことがあって、その活動を知っていました。
その番組は、一人の日本人医師が日本で医師として働いて収入を得て自らの生計を立てつつ、ミャンマーの貧しくて医療機関に治療してもらいにいけないような人たちに無償で医療行為をしていることというもの。
最初は全くミャンマーの人たちに信用されず、無料で医療行為をしてあげるよと言っていても誰も来てくれなかったところから始まり、後には救世主のように尊敬をされていくようになりました。
僕自身は貧しい人たちに何もしてあげていないのに日本人として誇らしい気持ちにさせてもらいました。
ミャンマーでスタートしたその日本人医師の志は、更にタイを飛び越えた東のカンボジアまで広がり、そこではしっかりとした設備を備えた病院を建設し、ミャンマーでは政府の規制でできなかった医療行為も可能になり、ミャンマーでは治療できないミャンマー人の患者をわざわざカンボジアに移送というか、来てもらって治療するし、もちろんカンボジア人の貧しい人も治療している、ということです。
高い収入を得ることができる職業の医師とは言え、ボランティアで手弁当で東南アジアまで行って無償医療行為をしているわけなので、到底自分の稼ぎからだけでは病院を建てることなんてできないし、手伝ってもらっている人たちにお金をあげることもできないので、日本で講演活動などをして寄付金を集めて運営費用や病院の建設費を得ているという話も出ていたと思います。
今回、ビズリーチでその日本人医師が取り組んできた事業のメンバー、というかコアメンバーの募集を見つけました。
【カンボジア・ラオス駐在】国際医療NGOの拠点責任者
という求人です。
募集するのは、特定非営利活動法人ジャパンハート。
1年更新の契約社員、給与は非公開で応相談、という待遇面の低さが気になりますが、数年間このポジションを経験することは、その後のキャリアに多いに活きて来るのではと思われる職務内容です。
日本の大学生にも最近、海外でボランティア活動をする人が増えてきましたが、話を聞くと、本当に海外でボランティア活動をしたかったというよりは、就職活動に有利になるからというのが本音のようです。
東南アジアの貧困層を助けているNGOなんかでボランティアで数週間とか数か月現地で働くというものです。
海外で生活した、それも厳しい生活条件の場所でということや、海外の人たちと英語でコミュニケーションをとって何かをしたという経験など、人生経験としてはかなりプラスになることがあるとは思いますが、本当に地球上の社会問題、具体的には貧困層を助けたいという気持ちがないのに就職活動でのアピール材料にするために海外NGOのボランティアに参加してみた、なんていうのとは全く違います。
この求人ポジションの職務は間違いなく想像よりもはるかに厳しくつらい仕事でしょう。
カンボジアとラオスの両拠点の駐在責任者のポジションで、100名のトップとなるカンボジアの責任者としての具体的な仕事内容は下記です。
・拠点の運営全般
事務所の運営、会計管理、人事管理の監督
・予算作成と執行管理
・政府機関等との折衝
・他NGO・国際機関とのネットワーキング
・東京本部との連絡・調整
10数名のメンバーがいるラオスの具体的な仕事内容は下記です。
主に医療事業・社会福祉事業、その他新規事業等を立案し、また、現在行っているプロジェクトも含め、ラオス政府と対話しながら現地のニーズに合わせて調整し、推進していく業務
・拠点の運営全般
事務所の運営、会計管理、人事管理の監督
・予算作成と執行管理
・政府機関等との折衝
・他NGO、国際機関とのネットワーキング
・東京本部との連絡・調整
国際医療NGOジャパンハートのミッションは「医療の届かないところに医療を届ける」。
募集要項には
当団体のビジョン/ミッション/バリューに賛同いただける方
という求める人物像の一つが示されています。
この募集要項の深い意味をしっかりと理解している方でないと務められないと思います。
一般的な民間企業とは違うんです。利益を上げることが目的ではないんです。
上記の具体的な仕事内容をもう一度確認してみてください。
国際医療NGOジャパンハートは、マーケットを海外に求めて医療を提供するわけではないんです。
利益を追求する民間の医療法人が海外に拠点展開をするのとは違います。
拠点があるのは「医療の届かないところ」なんです。
どこの誰も医療を提供していないところです。
なぜ誰も医療を提供しないのか?
民間企業がそれをしないのは経営が成り立たないから。
その国の公的医療機関がないのは、その国にはそんな予算がないとか、優先順位が低いとか、そんな地域に住んでいる人は医療サービスが必要であれば既存の医療サービス提供設備があるところに自分たちが来ればいいじゃないか、としているのかもしれません。
「医療の届かないところ」に住んでいる人達からすれば、その国に見放された人たち、ということになるのかもしれません。
それを、国際医療NGOジャパンハートは、本来はその国がその国の予算を使ってやるべき自国の国民の生命と健康を守る使命を放棄しているから代わりにやるのです。
にもかかわらず、その国では法的に規制をかけていて不可能であったり困難であることがたくさんあります。
妨害されているのではということまであります。
たくさんの人たちに感謝される一方で一部の人から恨まれているかもしれません。
今回のビズリーチの募集要項にはありませんでしたが、僕が見た番組では、先述のとおり、最初に始めたミャンマーではなくカンボジアに病院を建設するに至った理由はミャンマー政府の規制あるいは妨害です。
ミャンマー政府は悪名高い、アウンサンスーチーが中心となりイスラム教少数民族のロヒンギャの大虐殺を何年も続けています。
国際機関から警告されても国際的に孤立してもお構いなしの国です。
「医療の届かないところ」の人たちはミャンマー政府に虐殺されているわけではないけども、医療の面では見放されている人たちです。
本来の正当な医療行為での報酬としてはかなりの高額になるような難病や困難な手術が必要な人は、お金がいないからこのまま死ぬのを待つだけだったもののジャパンハートが無償で手術をしてくれたおかげて助かったという人が、「医療の届かないところ」にはたくさんいます。
ビズリーチの要項によれば、治療件数は20万件。
助けてきた命は数万人でしょう。
今回の募集ポジションは、いわば、実際に医療行為、治療をすること、そして運営費のお金を集めることの2点以外を全部責任をもって遂行するというポジションです。
医療行為をする医師や現地の看護師などのサポートスタッフが仕事をできる環境を整備すること、資金を調達する人が、投資家や出資者に説明するための資料を作成するなどのサポートをすることが具体的な仕事で、その仕事をするにあたっては、「医療の届かないところ」はなぜ、届かないのか、そこに「医療を届けること」どのような意義をもつのか、を常に意識してどんな困難も乗り越えていかないといけません。
そんなことを何年もやり続けられるひとが、創業者の日本人医師以外にいるのだろうか、とも思いますが、僕が今まで見てきた求人でも最も厳しい仕事を要求されている求人だと思います。
スカウト会社がかなりの高額の前金をいただいて取り組むような極めて難しい求人でもあると思います。